Pilot Deli System [!Report!] AgraBowl featuring by FURNITURE DESIGN AGRA No.007 06/2005


名古屋嬢エキシビジョン

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名古屋嬢による名古屋的生活術

      =
節約しつつ豪華にふるまうのココロ

 



名古屋嬢による名古屋的生活術

 21世紀初、自然の叡智をテーマにあげた日本国際博覧会である愛知万博。この一大イベントに伴い、経済も活性化され内外共に注目されている愛知県。この愛知県の西部に位置し、県庁所在地である名古屋市。中京工業地帯の中核で、堅実性・倹約性・などの経営姿勢を生かした名古屋商法という言葉も生まれた、中部日本の中心都市だ。
  この熱く波にのっている名古屋に注目したのが今回のカフェAgra BowlのPilot Deli System。2005/7/16「名古屋嬢による名古屋的生活術 ー名古屋的生活術=節約しつつ豪華にふるまうのココロ」。
名古屋のシンボルである五層五段の大天守、金の鯱により金城と称された名古屋城が有名だが、今回はタイトルにもあるように「名古屋嬢」の方に目を向けてみた。名古屋嬢とは、ブランドもので身をまといキュート・エレガントなファッションを好む、見た目がゴージャスで華やかさがキワだつ名古屋のお嬢様だ。この彼女たちのヘアースタイルである名古屋巻き 。これは、セミロングにゆるやかなカールをかけた名古屋が発祥のスタイルなのだが、このカール力を保つために普段から彼女たちはヘアーアイロンを持ち歩いているというのだからから驚きだ。常に普段のスタイルから妥協せず、美意識を高くもつ名古屋嬢。この名古屋嬢暦が25年という名古屋生まれ名古屋育ちの田口さおり氏。現在は名古屋を離れ札幌に在住しマダムとして、看護士として、そしてヘアメイクの勉強をしながらクッキングサロンのアシスタントをもこなすという、さまざまな分野で活躍をしている彼女。そんな彼女が、万博開催をきっかけにぜひ!名古屋を知ってほしということでここ札幌で名古屋を疑似体験できるという貴重な1日限りのエキシビジョンが幕を開けた。
 まずは入り口で、万博のキャラクターであるモリゾー&キッコロと田口氏がチョイスした華やかな名古屋嬢ファッションで身を包んだトルソーがお出迎え。さらにトルソーだけではなく、なんと田口氏本人も名古屋嬢ファッション、名古屋巻きスタイルで登場!写真でもなくイメージでもなく生の名古屋嬢をこの目で見ることができた。そして奥へすすむと店内には、名古屋の経済・生活事情、嫁入り道具、名古屋嬢出没スポットなど名古屋について田口氏が自ら模造紙に事細かく解説した、「名古屋生活解剖図」を掲示。興味深い内容が満載のこの解剖図と共に展示され、読めるようになっていた名古屋のファッション雑誌。最初から最後までムダなページがなく、すべて見落とすことができないほどの内容量であふれている見事な雑誌だ。そして、「名古屋弁講座」と題して掲示された数々の名古屋弁。北海道で捨てる・すごいを意味する、『なげる』『なまら』は名古屋では『ほかる』『どえらい』。また来てちょなど、お願いをするときに語尾に『ちょ』をつけるという愛嬌のある言葉もあった。この解剖図、名古屋弁講座、そして今回登場する名古屋料理のメニューなどはすべて彼女が筆で手書きをしたものだが最近、筆字・墨離れしているせいかどこか温かみをかんじ、そして様々な掲示物が学祭の雰囲気を思い出させ懐かしく楽しい空間の演出でもあった。

 さてさて、店内をグルリと見て気分がすっかり名古屋モードになったところでそろそろお食事に。
 名古屋発祥の料理といえば、天むす・櫃まぶし・きしめん・手羽先唐揚げなどがあるが、今回のエキシビジョンで登場した名古屋めしは「どて丼」「味噌串カツ」「鬼まんぢゅう」の3品。食べる前にまず驚くのが価格だ。それぞれ、どて丼400円、味噌串カツ一本100円、鬼まんぢゅう1個80円とかなりリーズナブルになっているのだが、田口氏によればこれは名古屋だとまだ高い方だという。モーニングという名古屋の喫茶店でいただく朝食では、コーヒーとパンとタマゴがついて300円代でいただけるとのこと。また、コーヒーをたのんだだけでパンなどが必ずセットでついてくるというサービス。名古屋では他よりもより安く、よりサービスのいいところというのが常識であり、また繁盛するカギでもあるのだ。
  この札幌バージョンの名古屋価格となり、田口氏の手により作られた名古屋めし。ネーミングからおもしろく、そしてパッと見カレーライスにそっくりなユニークな「どて丼」。名古屋の赤味噌と砂糖で、豚モツ・コンニャク・大根・にんじんをじっくりと時間をかけて煮込んだどて煮と呼ばれるものをごはんにかけていただくという、名古屋の家庭の味でもある定番メニューだ。初めてのどて丼、一口食べてみると赤味噌の濃厚で甘辛い味と味噌の香ばしいカオリに包まれる。丹念に煮込まれたどて煮なだけあって、豚モツ・野菜がとてもやわらかくそしてごはんによく似合う。このどて煮、普段から赤味噌を食べ慣れていないとかなり強い味にかんじるのだが、今回はその濃い味をやわらげるためごはんの上に千切りキャベツをのせ、その上からどて煮をかけ、さらにきざみショウガもトッピングされるという気くばりにより、パンチがききつつもさっぱりと仕上がった丼となった。そして名古屋料理でよく耳にする味噌カツ、これを今回は串カツでいただく。本来、串カツをどて煮につけて食べたのが始まりとされている「味噌串カツ」。その場で揚げられたアツアツの串カツに、今回は名古屋有名店の味を再現したという味噌ダレがトロ〜っとかけられる。味噌ダレがどんどん衣にしみ込む。串を手にとりかぶりつくと、ほどよく脂身のあるジューシーな味、サクサクとした食感に味噌ダレが絡みあい、旨味が出る。また、添えられているキャベツを串に刺してカツと一緒に食べると、これもまたさっぱりとした味に変わり味噌とキャベツの相性のよさがプラスされ、ついつい止まらなくなる一品となっていた。
  この丼とカツというボリュームのあるメニューでお腹もいっぱいになってきたところでも、目がいってしまう気になるメニューが「鬼まんぢゅう」。鬼まんぢゅうとは、サツマイモのゴツゴツとした見た目が鬼のようであることから名付けられたという。名古屋では和菓子店で販売されたり、家ではお母さんが作ってくれるという身近なおやつである。薄力粉に皮ごと切った角切りのサツマイモと水、砂糖を混ぜ、丸めたものを蒸かすとできあがるというとても簡単なお菓子だ。この鬼まんぢゅう、今回は家庭的なもの・一般市販されているもの・ムラサキ芋を用いたものの3種類が登場した。響きも見た目も名古屋にしかない鬼まんぢゅうなのだが、食べてみるとどこか懐かしい味がする。少しモチモチとした食感にのってサツマイモの甘みが直に伝わってくる。サツマイモの食物繊維がたっぷり含まれた健康的なお菓子。鬼と名付けられてはいるが、美味しく食べられてからだの気も配られたやさしい一品だ。
  そして、名古屋にしかない貴重なお菓子がもう一つ。カフェAgra Bowlのドリンクを注文するとサービスとしてついてくる「しるこサンド」。サンドイッチ風で、小倉餡がはさまれているものをイメージしがちだがジツはビスケット風の茶菓子。カンパンのようなビスケットで、この生地と生地の間にしるこ成分がサンドされているという意表をつかれたお菓子だった。このイベント中に登場した味噌串カツ、鬼まんぢゅう、そしてさらに串カツにかけた味噌ダレ、これらはお持ち帰りもできるようにもなっていた。きっと、自宅でも名古屋を満喫した人が多いはず。
 同じ日本でも全く違う独特の文化である外国のような名古屋。見た目は派手に、ゴージャスにしていても普段の生活では節約をし質素に過ごすという倹約性・継続性をかんじる生活習慣。このイベントで今まで知らなかったリアルな名古屋を知ることができ、そして味わうことのできない名古屋の生の家庭的な味も堪能することができた、名古屋パワーであふれたエキシビジョンであった。

Saori Taguchi 田口 さおり
名古屋生まれ。名古屋嬢暦25年を経て、現在は札幌で名古屋嬢マダムとして在住。
看護士として働きながら、新たにヘアメイクのレッスンを本格的にはじめる。札幌市
内で定期的に開かれている
クッキングサロンで、シェフのアシスタントとして
も活躍中。 ジャンルはさまざまだが、名古屋嬢として過ごしてきた彼女のもつ清潔
感とエレガントさ、
さらに行動力・気配りの面からすべての職にふさわしいと思えるその魅力は、
探究熱心さと相手を惹きつける力を備え持っているからこそだといえる。


Pilot Deli System
クールな大人のキュートな生活を提案するFURNITURE DESIGN AGRAのカフェスペース Agra Bowl は、
パイロットデリシステムをはじめま した。 食にかかわる方たちの真剣な取組みを発表するショーケースです。
バラエティーあふれるフードエキシビジョンを企画していきます。
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